保永堂版 沼津・黄昏図       
         
狩野川沿いの東海道を沼津宿へ急ぐ旅人を描いている。
副題に黄昏図とある。ちょうど上ったばかりの満月が大きく輝いている。
旅人は金毘羅参りの男と、抜け参り風の母娘。天狗の面を背負った白装束の男性は、讃岐の金毘羅大権現に詣でる人で、広重の絵によく出てくる。母と娘は二人とも柄杓を持っており、伊勢神宮へ旅する人で施し物を受ける時に使うのだそうだ。やはり広重の絵によく出てくるスタイルだ。
絵は随分暗い感じに描かれており、黄昏時の雰囲気をよく現わしている。
  街道は逆くの字に曲がっていて遠近感を表現し、中央を縦に満月、白壁、金毘羅参りと眩い白を配している。
西に満月が上がるのはちょっと不自然だが、広重の傑作として評価が高い。
描かれているのは黒瀬橋あたりだろうか。