<役者見立東海道五十三駅 沼津 国芳画>
国芳、三代豊国、広重、三人の人気絵師によって描かれたシリーズです。
沼津は国芳が担当して荷物平作、呉服屋十兵衛、お米の親子三人を描いています。
この絵は呉服屋十兵衛が父とは知らず平作に荷物を持たせたところでしょうか。場所は沼津宿の入り口・棒鼻とは傍示抗(石)の立っている所。国芳の絵には木の根元に道祖神が描かれています。
岡山藩の藩士・渡辺数馬が義兄・荒木又衛門の助太刀を得て弟・源太夫の敵、河合股五郎を伊賀上野・鍵屋の辻で討つ、日本三大敵討の一つ伊賀越道中双六・沼津ノ段。
呉服屋十兵衛の荷物を持つ平作と、お米に一目ぼれした十兵衛の場面。親子だと知らずにいる三人。実は股五郎を逃がす手伝いをする十兵衛に対し、数馬が入れあげた吉原の花魁・瀬川であったお米とその父という敵味方の関係になっている三人なのです。
平作の家に一泊した十兵衛は平作とお米が、父と妹であることを知り、翌朝早く印籠を置いて出発する。平作は十兵衛が生き別れた息子であること、印籠が河合股五郎の物だと知り、急ぎ十兵衛の後を追います。
千本松原で追いつき問いただすが、股五郎の行き先をなかなか教えてくれない十兵衛の脇差をとり、平作は自分の腹に刺して頼んだ。どうか死に逝く老人に、冥土の土産に股五郎の行き先を教えてくれと。十兵衛は、お米が陰で聞いているのを知りつつ、大きな声で股五郎の行き先を教えて去ってゆく。これが歌舞伎や人形浄瑠璃の沼津ノ段なのだそうです。
平作が茶屋を営んでいたという黒瀬橋のたもと、に今も平作地蔵が祭られている。